林満夫牧場

基本情報

代表者 林 満夫
牛舎 つなぎ牛舎
頭数 搾乳牛25頭 育成牛20頭
牧場所在 恵庭市

効率経営に裏打ちされた“楽農家”スタイルで、高品質乳を着実に生産

牧場にお邪魔するやいなや、「うちのような小さな牧場では何もお話しするようなことは無いんだけどなぁ」とにこやかな笑顔で頭をかきながら登場した林満夫さん。

一般的に、北海道の牧場といえば広大な敷地に多数の牛が飼育されているイメージがありますが、こちらの牧場はそうしたイメージとは多少異なり、高速道路インターチェンジからほど近く、またすぐ隣接地まで宅地開発が進むなど一般的な生活圏内に溶け込んだ規模で営農されています。

トラクター好きが高じて酪農業に参入

昭和39年に購入し、動かなくなってから長らく倉庫に眠っており、従業員の鎌田さんと一緒に分解して塗装している様子

塗装完了。新品同様によみがえりました

林家はもともと畑作農家。
昭和15年頃、堆肥に利用できるからと手始めに3頭ほどを飼育してから、牛との関わりが始まりました。
家業の畑仕事に携わっていた満夫さんですが、大きな転機は、開場したばかりの近隣の牧場にお手伝いに赴いた際、まだ国内でも珍しかった大型のトラクターを目にしたことでした。当時、まだ10代の若者だった満夫さんの目にはそのアメリカ製のトラクターが眩しく映り、大きな感動を覚えたといいます。

以来、トラクターに心を奪われた満夫さんの気持ちを知った両親は、本格的に農業に従事してもらおうとトラクターを購入。満夫さんもトラクターに乗れるからと、酪農業に本格的に取り組むことになりました。

苦労を重ねた創業と指導者との出会い

牛の扱いには慣れていたとはいえ、本格的に酪農をスタートさせた創業時の昭和45年頃は苦労の連続だったといいます。乳牛の体調管理に配慮するも乳質や乳量が思うように安定しない一方、飼料代や設備代の負担が増すばかりで経営的に苦しい状況が続いていたことも。

そうした中、大学教授であった熊谷氏との出会いが大きく環境を変えました。近隣の酪農家、数軒が集まり、「何よりも牛が健康でなければ酪農は成立しない」との考えに基づいた厳しい勉強会、指導に取り組み始めたのです。

まず、ふん尿をしっかり切り返して完熟堆肥をつくり、これを利用して牧草地の土壌改良に着手。土壌中の微生物を活性化させることで飼料となる作物の質を向上させ、牛の消化効率の改善を目指しました。当然、大きな自然サイクルの改善には、根気のいる作業と長い時間を要しました。大きな成果が見えない中で、「そんなことをしても効果が出るわけない」と周辺から冷たい目で見られたこともあるといいます。

ただし、実際に取り組みを続けていたメンバーらは、確かな手応えを感じていました。牛の体調が着実に安定してきたのです。放牧中に良質な牧草をたらふく口にするため、飼料のデントコーンがそれまでの半分で済むこともあり、経費と労働力の負担が大きく軽減し、「経営状況がメキメキと良くなりました」(満夫さん)。

牛の健康を目指したこうした取り組みは、結果、経営効率化をも実現させたのです。ご夫婦ふたりでしっかりと目の届く規模で営農する“楽農家”スタイルを続けてきた林牧場には、長年の取り組みにより、規模拡大に頼らずとも十分に健全な経営を続けられる背景がありました。

「NON-GM牛乳」生産へのスムーズな移行

乳質が向上し、経営も安定化したタイミングで新たな転機が訪れました。平成11年4月よりサツラクが、非遺伝子組換え (NON-GM) 飼料のみで飼育した乳牛による生乳生産を開始したのです。

高単価な非遺伝子組換え飼料のみを使用し、飼料設計の工夫や新たな技術習得など数々のハードルが課された、業界に先駆けた取り組みでしたが、経営の効率化に成功し、次へのステップアップを考えていた満夫さんは、「やるしかない」とすぐさま決断しました。

もともと飼料や乳質の管理、堆肥に対する取り組みで先行していたこともあり、大きな変更を必要とせずにスムーズに新たな生産体制への移行に成功。「非常にタイミング良く転換できました」(満夫さん)と振り返ります。

NON-GM牛乳生産への自信は、消費者からの評価を目の当たりにした際に確信したといいます。常総生協主催の生産者交流会で他メーカーを含む20数品での飲み比べを行ったところ、自身が生産する「酪農家限定シリーズ」が圧倒的多数で支持を得たのです。「ほっと安心したと同時に、大きな自信につながりました」(満夫さん)と目を細めました。

酪農家キャリア約半世紀、自他ともに認める“楽農プロフェッショナル“の満夫さんによると、高品質乳を維持していくためには「牛も作り手も健康が一番」。“楽農家”らしく、肩肘張らない自然体での姿勢に大きな安心感を覚えました。

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